No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

誰も守ってくれない

幼い姉妹の殺害事件で未成年の容疑者が逮捕される。その瞬間から容疑者の家族は、マスコミや世間の目を避けるため警察の保護下に置かれ、中学生の妹・船村沙織の担当は刑事の勝浦に任される。ホテルや自宅アパート、友人のマンションを転々とするが、マスコミの執拗な追跡に行き場を無くした勝浦は、かつて担当した事件の被害者家族が営む伊豆のペンションに身を寄せる。そこへ沙織のボーイフレンドが駆けつけ―

*-*-*-*-*-*-*


*-*-*-*-*-*-*

予告編でずっと気になっていて、今日は祝日だしレディースデイで¥1,000だったので、母と一緒に観てきました。
スクリーンが小さい所だったということもあるけれど、満員でした。

被害者の家族をテーマにしたものは、数多いけれど、今回の映画のように加害者の家族側からスポットを当てたというのが、まず斬新だと思います。

そして、自分は何も知らなかったんだなと実感した、重く内容の濃い物語でもありました。

-----------------------------

幼い姉妹を殺害した犯人は、近所に住む未成年の少年だった。
自分の息子が、兄が、殺人者であると知った家族。

逮捕状を持った刑事が家に押し寄せ、少年が逮捕された。
家庭裁判所の手続き、学校教育関係の手続きがすみやかに行われる。

「このままご主人の姓のままですと、すぐに犯人の身内だと分かってしまいます。すぐに離婚してください」

そう言った担当者がおもむろに離婚届を差出し、少年の両親に署名を促す。
戸惑いながら署名・捺印を終えた両親。
しかしすぐに

「それでは、旦那さんには奥さんの籍に入って頂きます」

そうして、婚姻届を取り出し署名を促す。

「はい。これで、手続きは完了しました」

事務的で、とても淡々とした担当者に、唖然とする加害者家族。

自宅周辺では、マスコミ・野次馬がつめかけ、騒然としている。
罵倒する言葉、やみくもにたかれるフラッシュ。

訳も分からぬまま、少年の父・母・妹はそれぞれ別々に警察から事情聴取を受けるために家を後にする。

しかし、加害者の家族=罰すべき対象であるという世間やマスコミは、そんな家族に容赦なくカメラを向け、執拗に追いかけていく。

そんな加害者の妹を保護することになった、刑事。

何処までも執拗に追い続けてくるマスコミ、ネットでの個人情報流出
誹謗中傷。

ついには、「税金を使って加害者の家族を守る警察」に対する抗議の声も上がり始める。

さらされる名前、住所。
何処まで逃げても追いかけてくるマスコミ。
世間の冷たい目。

母はこの事を苦に自殺し、孤独感を募らせる加害者の妹。
口を閉ざし、事件の真相を語ろうとしない加害者。

少女の行き着く先とは―

*-*-*-*-*-*-*-*-*

誰にでも、起こりうることなのだろうと思いました。
だけど、それが自分に起こらない限りは、他人事にしか思えないのだろうとも思いました。

自分は何もしていないのに、突然世間から糾弾される加害者の家族。

世間は、被害者やその遺族に対しては同情をするが、加害者や加害者の家族には罪を償っていけと思うのだ。
たとえ、事件には何の関わりもない家族でさえも。

流石にマスコミとのカーチェイスはないだろうけれど、ネット上でこんな風に本名や住所、写真を去らされることなど、現実に起こっていることなのだろう。
顔が見えないからこそ、エスカレートするネット社会の恐ろしさがリアルに描かれていた。

そして、志田未来さんの迫真に迫る演技と、自分の息子の命を無残に奪われた父親を演じた柳葉さんの演技が、一番に光っておりました。


題材が題材なだけに、ハッピーエンドでは終わりません。
そして、加害者家族にとって、きっと一生つきまとっていく「加害者の家族」であるというレッテルは剥がれることもないのでしょう。

また新たな事件が起こって、すぐにその大きな事件が世間から忘れ去られてしまっても、被害者と加害者の家族だけは、一生その事を忘れる事は出来ないのです。

人は物事を忘れてしまう生き物だけれど、私が生きてきた人生の中で起こってきた数々の大きな事件には、被害者と加害者の家族がいて、世間が忘れ去ろうとも永遠に彼らの中では終わっていないのだ。

そういう事を深々と考えさせられた映画でした。


ドラマ版の誰も守れないがとても面白くなかったので、映画のテンポの良さと展開には満足しました。
しかし、佐々木さんの役柄が意味深に登場してきたのに、あまり絡むことがなくて残念でした。
いっそ佐々木さん側から描いたスピンオフを描いても良かったのではないでしょうか、なんて思ったりしました。

重いテーマの映画でしたが、今年一番目に見た映画としては、なかなかの満足度でした。