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花が咲く頃いた君と

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ひまわりで遊び、コスモスに恋をし、椿に涙して、桜の微笑みに頬笑む—。目を閉じ、耳を澄ませば、可憐な花の囁きが聞こえる。静かに。だけど力強く生きる。そんな決意が聞こえる珠玉の短編集。

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豊島ミホさんの本です。
結局サイン本ないから買っていなく、図書館で借りて・・今更ながらに読みました。

やるじゃんか!豊島さん!


と思わず豊島さんが近くにいたら、バーンと肩を叩いてしまいたくなるような、いや、久しぶりに豊島さんの本で熱くなりました。

ここ最近・・発刊ペースは早くて嬉しいのですが、どれもこれも似たり寄ったり感があって・・正直一度読めばいいかな・・位に思っていました。

初期の頃は、まだ拙さもあったけれど、確かに私に響いてくる話を書いていた気がするのです。
しかし、最近の傾向とか、話の内容がどれも何だか同じように思えてくる感じが否めなかったんです。

ただ、アンソロジーに収録されている話は、他の作家よりも群を抜いてとても強い余韻を残してくれる所は、流石豊島さんだなという感じもしていました。

辛辣な意見を言ったりしてますが、私は豊島さんが好きです。

で、この本です。
花をモチーフにした、4つの短編集なのですが・・

椿の葉に雪の積もる音がするで、私は思わず目を潤ませていました。

もう、駄目なんです。孫とおじいちゃんっていう構図が!というか、実際に孫とおじいちゃんが並んで歩いてるのを見るだけで、泣きそうになっちゃうんですよ!!

今回は、椿が好きなおじいちゃんと、孫の女の子の話で・・まあ、おじいちゃんとの永遠の別れが突然にやってくるという話なんですけどね。

おじいちゃんの、家族の中でやっぱり微妙に浮いている感じだとか、物言わぬ背中だとか、そういう描写が上手すぎる。

そして、何よりラストで目頭が熱くなったのは・・

椿のと、セーラー服の上に着るセーターのの対比が、これほど色鮮やかに目の前に浮かび上がってくるものか!
と思える程に、上手いんです。

葬式でも病院に運ばれたおじいちゃんを見ても、ちっとも泣けなかった主人公の女の子が、そこで初めて涙する・・そんな些細な描写なのに、実際に私がその場でその光景を見ているかのような気持ちになってしまいました。

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サマバケ96
コスモスと逃亡者
椿の葉に雪の積もる音がする
僕と桜と五つの春

どの作品も、最後に確かな物語の余韻を残してくれます。

サマバケ~は、友情について深く考えさせられましたし、僕と~は片思いと桜の木がとても印象的でした。
コスモスは・・どうも登場人物達があまり好きになれませんでしたけど・・。

今回は、ちょっと頭の足りない女の子とか、言葉が上手く出ない男の子、とか「普通」と言われる少年少女じゃない主人公がすえられていて、でもなかなかそれも上手く描いていたように思います。

久々に、豊島さんの作品をじっくり味わえた一冊でした。