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王妃の館<上>

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パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、ルイ十四世が寵姫のために建てたという「王妃の館」。今は、一見の客は決して泊めない、パリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっているこのシャトーに、なぜか二組のワケあり日本人ツアーが同宿することになった。しかも、倒産寸前の旅行代理店の策略で、客室を昼と夜とでダブル・ブッキングされて…。

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浅田次郎さんの本です。

初めて読みましたけど、「鉄道員」と「憑神」って浅田さんが原作だったんだ!
無知って怖い。

有名な作家だし、名前は知っていましたけど・・恥ずかしながら初めて読みました。
なるほど、とても読みやすくて、それでいてテンポ良くコミカルであり、時々ほろりとするような巧みな文章に、ぐいぐい惹き込まれました。

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パリ十日間149万8千円の<光>ツアー参加者と、19万8千円の<影>ツアー参加者が、全く同じ高級ホテルに同宿するという、前代未聞のツアーが密かに計画された。

<光>ツアーの参加者と<影>ツアー参加者には、お互いの存在を悟られてはならない―
<光>ツアーを引率するのは、敏腕ツアーコンダクターの玲子。
強引にその計画を実行しなくてはならなくなった、<影>ツアーのコンダクター、戸川。

ホテルの従業員をも巻き込んで、まんまとパリツアー10日間の旅が始まったのだが・・

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何より面白いのは、<光>と<影>ツアー参加者が、微妙にリンクしているという点でしょうか。
訳有りのOL、何かを決意した陰の雰囲気のある夫婦、ビジネスマン風の二人の男、オカマと元警察官・・
一癖も二癖もある人物像がとても魅力的で、何よりダブルブッキングの事実を客に悟られてはいけないと、あたふたする<影>のツアーコンダクターの戸川と、完璧にこない<光>ツアーコンダクターの玲子のやりとりの、対照的な様も面白い。

私は、外国が舞台になっている話とか、外国に行く話すらも嫌いで(苦手らしい)読む気をなくしたりするのですが・・これはそんなことはなかったです。

超高級ホテルとなっている、ルイ十四世が建てた「王妃の館」。
その物語が現実の物語と交差して、奇妙で、それでいてコミカルで、時折ほろりとさせてくれる話の展開が、気になります。