瞬間、会場中がピンと張り詰めた空気に満ちた。
以前から解散説、様々な憶測が飛び交っているバンドだった。
けれどもこうして、五十嵐氏の口から出た言葉は酷く曖昧で、だからこそ観客は一瞬その意味を飲み込めずにいたのかもしれない。
けれどもこうして、五十嵐氏の口から出た言葉は酷く曖昧で、だからこそ観客は一瞬その意味を飲み込めずにいたのかもしれない。
ざわめき、すすり泣く声も、確かにあった。
けれども自分を含め、ほとんどの人が呆然と立ち尽くしていたように思う。
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2階席、後ろから二列目。
NHKホールに入った瞬間、その規模の大きさに圧倒される。
そうして、会場の外に張り出されたSOLD OUTの文字、事実場内の席を埋め尽くす満員の会場内を見て、改めて彼らの人気と今回のツアーの意味深なタイトルに嫌な予感が頭を掠めた。
一緒に参加させて頂いたセンガさんから「今日は何だか重大な発表があるみたいですよ」という言葉を聞いて、更にその予感は増していく。
17時半を少し過ぎた頃だろうか。
静かに、メンバーが姿を表した。
立ち上がる観客。
上から眺めると、びっしりと埋め尽くされた会場内の姿が一望できる。
上から眺めると、びっしりと埋め尽くされた会場内の姿が一望できる。
しかし当のシロップのメンバーが豆粒程にしか見えない。
それ程に遠い。
それ程に遠い。
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結論から言うと、今回のライブは非常に素晴らしかった。
音響効果は、絶大であることは言うまでもないだろうけれども、それを差し引いたとしても最高のライブだったといいたい。
前回の「924Presents」では、音や歌詞を間違えたり、コンディションもよくなかったような気がする。
それと比べるのも憚られる程に、五十嵐氏の高音は素晴らしく伸びやかで、中畑氏のドラムはとても力強く、キタダ氏のベースの安定感は聴く者の心を打つ程に素晴らしかった。
素晴らしいなんて言葉で片付けられない。でも、そうとしか言えないもどかしさ。
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毎度ながらほとんどMCのない彼らのライブは、非常に短く感じられた。
「シロップ16gです」
「ありがとう」
とか、そういういつもの言葉少なな感じは変わらない。
けれども・・確かに最後に五十嵐氏の口から何かが語られるであろう予感がうごめいていた。
けれども・・確かに最後に五十嵐氏の口から何かが語られるであろう予感がうごめいていた。
黄色い声などない。
皆、祈るような気持ちで、ステージを見つめている。
静かな、とても静かなライブだった。
二度目のアンコールの時、とうとう五十嵐氏が語り始めた。
呼吸も出来なくなるような落ち着かない状態で、その言葉を固唾を呑んで見守る観客。
「今まで、スタッフやメンバーや皆さんに支えてもらってきたけど、いつまでも甘えてばかりじゃ駄目だから、僕が大好きな武道館で3月1日にライブをやります。でも、その日を持ってSyrup16gは・・一旦終了させてもらいます」
武道館でのライブという話を五十嵐氏がした時、会場には明らかに緊張がほぐれたかのようなため息と、嬉しさ、「な~んだ、いいニュースだったんじゃん!」という安堵の表情をした周囲の様子が伝わってきた。
勿論、自分自身もそうだ。
何だ、いい事じゃないか。彼らはまだこれから続いていくんだ・・そう安心した雰囲気が会場を満たした。
しかし、五十嵐氏の言葉は終わらなかった。
一旦、終了
その言葉の意味を、一瞬捉えられない人はきっと沢山いただろう。
呆然と、ただ呆然と立ち尽くした人々に、最後の翌日が聴こえたのだろうか。
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今日、公式HPを確認すると・・そこには『解散』の二文字があった。
来月のニューアルバム発売。
次のステージへと進むのだと信じて疑わなかった思いは、砕け散る。
そうして、彼らは最後に武道館という大きなステージで、幕を閉じるのだ。
セットリスト(HPより抜粋) ニセモノ(新曲)/I・N・M/生活/神のカルマ/さくら(新曲)/HELPLESS(新曲)/途中の行方(新曲)/ラファータ(新曲)/ハピネス/ハミングバード/落堕/Sonic Discorder/天才/パープルムカデ/scene through(新曲) アンコール1:週末のヒーロー(新曲)/クーデター/空をなくす/真空/リアル/ アンコール2:きこえるかい/翌日
彼らの活動は、3月1日で幕を閉じる。
その事実が未だに現実味を帯びていない。
本当に「これで終わり」なのか。
本当に「これで終わり」なのか。
彼らと出会ったのが、高3の頃。
あれから私は彼らと一緒に歩いてきた。
そんな大好きなバンドだ。
そんな大好きなバンドだ。
だからこそ、悲しい。
残念だ。
残念だ。
・・私の頭の中では、シロップの音楽が・・一日中ぐるぐると回り続けている。