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東京・地震・たんぽぽ

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東京で大地震発生―。「その時」露わになる、心の奥底とこれまでの人生すべて。瓦礫の街で芽生えるのは、悲しい孤独?それとも明日を生きるための勇気と希望?25歳の作家が恐れと祈りをこめて描いた、書き下ろし短編集-

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豊島ミホさんの新刊です。

相変わらず発行ペースの早さに脱帽と同時に、嬉しく思います。
今年発表している神田川デイズぽろぽろドールと比べても、私はこの本が一番好きで、色々な意味で心に残る一作になりました。

豊島作品の中で、檸檬のころ底辺女子高生と並んで好きになった作品です。


もし、東京で大地震が起こったら・・・



地震に遭遇してしまった人、そして被害にあった人、命を落とした人、身内を失った人・・
被害にはあわず実感のわかない人、偶然被害にあわずに済んだ人・・

地震が起こり、パニックになる街。

しかし、確実に被害に合った人と合わない人の想いは別物である。


例えば、友人から大地震が来ると予言され田舎に帰っている時に東京での地震を知る大学生。
例えば、公園の東屋の下敷きになり真っ暗闇の中に閉じ込められた主婦。

例えば、地震によって今まさに自分の命を失いかけている女子高生。
例えば、恋人が地震によってひしゃげた電車に乗っていることをしり、遺体を確認出来ない状態でも「死」を知らされた彼女。


実際に、東京にこんな大地震がきたら・・いくら耐震構造のビルだとしても、倒壊はしないまでももっと被害は大きいだろう、とは思う。

だが、確かに被害の大きいところと小さいところというのは出てくるものかもしれない。

そして、都会の悲惨さを遠くの地方で知る事。
ましてそれが大切な人や知人、友人がいる東京なのだ。

その人の想いも考えただけで痛い。


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豊島さん自身のブログでも、こんな風にかかれています。


・・・「自分は震災経験者だが、地震というのはこんなものではない」
「なにもわかっていない人間に震災を描かれて非常に気分を害した」
というかたがいらっしゃれば、申し訳ないと言うほかないのです。
無謀な試みを選んでしまった私が悪いんであって。

実際、先月の中越沖地震の報道を見て「あっ」と思ったこともたくさんありました。
ここはまるで思いおよばなかった、想像が圧倒的に足りてなかった、というところが・・・


と、それでも・・それでも!

私は実際に大地震を経験していないし、豊島さん自身も経験はしていない。

でも・・それでも少しばかりは読み手に何かを与えてくれる小説だと思えるのです。

短編の一つ一つが、やっぱり何処か悲しくやりきれなさが漂っている。

そこに見えるのは、「たんぽぽ」の花。
少しばかり見える希望

地震」という被害にあった、人々の絶望

それでも、生きていかなければならない人々の、残されてしまった人々の・・そんな話。

決してハッピーエンドではないけれど、それでも不思議な余韻を残してくれる短編集です。
ぜひ読んで欲しい一作であります。

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ちなみに・・

仙台旅行先で買ったサイン本。
豊島さん直筆のフリーペーパーには、前編解説と絵が描かれていて可愛いです。

あと、全然関係ないですが・・
タイトルのこういう言い回しが凄く好きなんです。

だから今書いている小説とかも、ね。こういう感じです。