終末のフール

あと3年で世界が終わるなら、何をしますか。;2xxx年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中、仙台市北部の団地に住む人々は、いかにそれぞれの人生を送るのか?

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伊坂幸太郎さんの本です。

小惑星が地球に激突する－
そんな起こりえないと思われた出来事が突然あと八年後に訪れる・・
もし自分がその立場になったら、あなたならどうしますか？

ある者は絶望し、自らの命を絶つ。
ある者は狂ったように人を殺し、家や車に火をつけ、食料を奪い合う。
ある者は自分を守るかのように家の中に引きこもる。

両親や、恋人、兄弟・・暴漢に襲われ、今やいなくなってしまった人たち。

取り残された者達が、ようやく静かに生活が出来るようになったのは、地球に小惑星が衝突するまであと３年に迫った頃だった。

街は穏やかさを取り戻し、少しずつ静かな生活が戻ってきた。

そんな最後の３年を過ごすとある仙台のマンションの住民たちの、それぞれの物語。

終末のフール
太陽のシール
籠城のビール
冬眠のガール
鋼鉄のウール
天体のヨール
演劇のオール
深海のポール

それぞれの短編に、他の話に出ていた人がちらりと登場してくるのがまた読んでいても嬉しかったりします。

でも、世界の終わりの残り数年を過ごす登場人物たちは、何処か希望と、諦めを半分ずつ持っているような圧倒的な絶望感みたいなものを抱えていて・・
希望のある話もあるのだけど、とにかく漂うその独特の「終わり」の雰囲気が否応なく読み手にも伝わってきました。

あと３年の世界に誕生した小さな命。生むべきか、生まないべきか？
生まれても３歳までしか生きられない運命を背負う子どもは、果たして幸せになれるのだろうか？
そんな決断を迷う夫婦の話　／太陽のシール

死んでしまった父の書斎の本を全て読みきる目標を達成した主人公は、新たな目標として「恋人を見つける」を誓った。
新しいことをはじめるには、三人の人に意見を聞きなさいという事が書かれている本を読んだことで、尊敬している人・自分には理解できない人、これから新しく出会う人を探して記憶をたどる－
／冬眠のガール

役者を目指し、上京したものの地元に戻ってきた主人公。
しかし、小惑星の激突が世間を混乱させると共に両親を亡くし、今は一人で暮らしている。
そんな役者志望だった自分に出来ることは、おばあちゃんの孫を演じること、姉として一人で住む「妹」の話し相手になってあげること、男の子の恋人のふりをして一緒に夜を過ごすこと、幼い兄妹の母親代わりになってあげること。
気休めにしかならない現実は、奇妙な運命に手繰りよせられるようにして変わっていく－
／演劇のオール

そして、最後の章では絶望の中に一筋の明るい光が差してきたかのような錯覚に襲われる。
穏やかに、だけど静かに訪れる世界の終わりをあと数年後に控えながら、新たな希望を胸に残りの人生を生きていく人々の心の強さに胸を打たれます。

今までの伊坂さんの作品では、まだコミカル路線が強い作品しか読んでいなかったので、こんなに切ない気持ちになる作品は意外でした。

それでも、絶望という感じを与えない所が、やっぱり凄い作家さんなんでしょうね。