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日曜日たち

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ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。都会の喧騒と鬱屈した毎日のなかで、疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。ふたりに秘められた真実とは-

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吉田修一さんの本です。

いつも沢山の本を読まれ、更にその感想文がとても素晴らしいるいさんからお借りした中の一冊。
ようやく読みました。

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日曜日にまつわる5つの短編集。

日曜日のエレベーター ・・医者志望の元彼女との思い出
日曜日の被害者    ・・友人の思わぬ告白に
日曜日の新郎たち   ・・忘れられないもの
日曜日の運勢     ・・「女運」のない主人公
日曜日たち      ・・DVにあう女性と、兄弟のその後


それぞれの登場人物の中で、二人の幼い兄弟だけが物語を繋ぎます。

何気ない場所に、ふともぐりこむようにいた兄弟。
それぞれの主人公たちが、ふとした拍子に懐かしく思い起こされるあの子たちは・・一体何者なのか?

とあるときには、パチンコ屋の駐車場で。
ある時には新幹線の中で。
ある時にはアパートの入り口で。
ある時には部屋の前で。
ある時にはとあるセンターで。

一時登場人物たちと接触をするのだけれど、その時間はあまりにも短く、すぐに姿を消してしまう幼い兄弟。

私は最初、彼らは実際の人物ではなく何か幽霊ではないけれど不思議な存在なのだと思ったのです。

毎日に嫌気がさしてしまうような中、またはすっかり忘れていたと思っていたのに・・
ふと思い起こされる思い出の中に、兄弟がいて。

だからこそ、生身の人間のような気がしなかった。

だけど、心細そうな弟。強気な態度だけれど何処か不安げな兄。
すえた匂いと、空腹を抱えて母を捜して九州からたった二人でやってきたらしい兄弟。

母のいると思われるアパートまで訪ねても、そこには母の姿はなく。
お金もろくになく、食べ物も食べていない。

そして最後の「日曜日たち」で、兄弟の全貌が明らかになっていく。

生身の人間であり、幼いながら母を頼りにはるばるやってきたらしい兄弟。

悲しいラストかと思わせて、最後はほっと胸をなでおろすような優しい終わり。


5組の主人公達のそれぞれの不思議な余韻を残す物語と、結末で明かされる兄弟の謎。

久々に読んだ吉田さんの作風は、やっぱり好きです。

私の中では日曜日たち日曜日の新郎たちが好きです。