吹奏楽部の指揮者である高校三年生の秋元加代子は、なんだってうまくこなし、成績も優秀。
卒業後は、東京の大学に進学すると決めている。
野球部の西巧は、いつも加代子を見つめていた。忘れられない、中学時代の淡い思い-
そんな西に、ある日の放課後、野球部のエース佐々木富蔵がおちゃらけて言った。
卒業後は、東京の大学に進学すると決めている。
野球部の西巧は、いつも加代子を見つめていた。忘れられない、中学時代の淡い思い-
そんな西に、ある日の放課後、野球部のエース佐々木富蔵がおちゃらけて言った。
「オレ、加代ちゃんのこと好きなんだ」
絡まない、西と加代子の視線。
近づいていく加代子と富蔵の距離。
近づいていく加代子と富蔵の距離。
加代子と同じ教室の片隅で、音楽にのめり込んでいる白田恵。
将来は音楽ライターになると心に決めている。
将来は音楽ライターになると心に決めている。
ある日、白田は自分と同じように音楽を「感じている」軽音楽部の辻本一也を知る。
偶然の、ふたりきりの生物室の放課後清掃。盛り上がる音楽談義。
偶然の、ふたりきりの生物室の放課後清掃。盛り上がる音楽談義。
「こんなに話が合うやつとしゃべったの、俺、初めてだよ」
急に色鮮やかに、輝いて見えるいつもの風景。心にぎゅーんとロックが鳴り響く。
もうすぐ最後の文化祭。
辻本が初めて作った曲の歌詞を、白田に頼んだことから様々なドラマが動き出す。
沢山の痛みを通じて溢れ出た白田の言葉が加代子に響き、そして富蔵や西にも影響を与えていく-
沢山の痛みを通じて溢れ出た白田の言葉が加代子に響き、そして富蔵や西にも影響を与えていく-
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2007年
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いやぁ。泣きました。
特に、音楽ライターを目指す白田に共感し過ぎてぐっときてしまって。
特に、音楽ライターを目指す白田に共感し過ぎてぐっときてしまって。
多分、普通の人だったら加代子と富蔵の恋愛にぐっときてしまうんだろうと思うのですがね。
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地味な人なりの青春を、あれだけ繊細に書ける豊島さんの文才に惚れたと思った位だったので、ということはイコール映像化してもこの世界観など作り出せるものか!
と何処かで高をくくっていたのである。
と何処かで高をくくっていたのである。
ところがどうだ。
原作の世界観を失わず、それでいてこんなにも「あのころ」を懐かしく、愛おしく描いているじゃないか!
何より、前編オール栃木ロケということもあり、あの田舎独特の哀愁だとか緑が溢れすぎている位溢れる田園風景なんかは、同じく栃木・足利でロケを行ったリリイ・シュシュのすべてが頭をよぎった位だった。
あのローカルな、ほとんど客の乗っていない電車も。
山奥にある、だだっ広い校庭も。
山奥にある、だだっ広い校庭も。
何処か私の地元の風景と重なる事がありすぎて(実際ロケ地は知っている所がほとんどだし)、妙にシンクロしてしまう。
更にその世界観を作り出したのが、出演者達である。
長身を活かした凛とした佇まい。また、何でも出来てしまうはずの加代子の、糸がぷつりと切れてしまったかのような、最後の号泣シーン。
その、何とも言えないギャップ。
その、何とも言えないギャップ。
栄倉奈々は、見事に加代子を演じきったのである。
その加代子との中学時代の淡い想いを忘れられずにいる石田法嗣演じる、西が良い。
戻りたくても戻れない「あの頃」の思い出に、必死ですがりつこうとするだけだった西が・・少しずつ前を向きはじめる。
レモンの香りのリップクリームと、淡い想いが観るものの胸に響く。。
そして、加代子と想いが通じるものの大学進学をきっかけに離れる事になってしまう佐々木を演じた柄本佑。
田舎の高校の中では珍しい存在でもあり、クラスから浮き気味の音楽ライターを目指す女の子、白田。
教室でただ一人音楽雑誌(ロッキンオンジャパン!)を読み漁りながら、ひたすらヘッドホンの音楽の世界に浸り続けるという変わった役柄を演じた谷村美月。
教室でただ一人音楽雑誌(ロッキンオンジャパン!)を読み漁りながら、ひたすらヘッドホンの音楽の世界に浸り続けるという変わった役柄を演じた谷村美月。
教室にいる加代子達を遠めに見つめながら、何処にも同じ世界観を持った人間などいないと、冷めた目で音楽に没頭する。
音楽への熱い気持ち、また「同志」である辻本への恋で一気に日常の風景が鮮やかになる。
そしてひょんなことから作詞を依頼された白田。
しかし、同じ音楽好きの志摩ちゃんへの嫉妬や、辻本への恋心が玉砕し・・
気持ちは底まで沈みかける。
気持ちは底まで沈みかける。
だけど・・それがいつしか歌詞へと変化していく。
自転車を漕ぎながら、大声で曲に歌詞を乗せて歌っているシーンがとても印象的だった。
そして、文化祭のライブ当日。
それはまるで、映画リンダリンダリンダのライブを観た時のような、同じような感覚だった。
だけど、今回は音楽を演奏する側ではなく、作詞をするという言葉を与える立場なのだ。
なのに、何故だろう。
誰かが言わなければ分からないような、小さなこと。
なのに、沢山の人に白田の歌詞が響いていく。
それは、加代子にも富蔵にも・・そして私は、胸の奥が熱くなるのだった。
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しかし、演技はまだまだですが。
でも、劇中で白田が作詞した曲をバンド演奏で直次郎が歌うのですが・・これが意外に心に響いて参りました。
白田と辻本が音楽話をしている時に、「一生に残したい名盤は?」みたいな話をしているのですが
「くるりと100Sと・・」とか、「quake and brookも外せないよな」(って多分言っている気がするんだけど、バンアパですよね?!)という些細な会話ににんまりしてしまいました。
「くるりと100Sと・・」とか、「quake and brookも外せないよな」(って多分言っている気がするんだけど、バンアパですよね?!)という些細な会話ににんまりしてしまいました。
あと、「NO MUSIC NO LIFEって感じ?!」と言っているのも微笑ましい。
という訳で、どうにもぐだぐだな感想で申し訳ないです。
原作に出てくる「金子商店の夏」の金子さんがちゃんと出てきて、少しだけあの物語に触れています。
そんな些細な遊び心も嬉しかったり。
そんな些細な遊び心も嬉しかったり。
それにしても、もう一度原作が読みたくなる映画って珍しいと思いませんか?
時間が出来たら、また読み直してみようと想っています。
お薦めの映画です。
写真は、檸檬新聞とパンフレットとポストカードです。