No-music.No-life

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虹の女神 Rainbow Song

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いつだって傍にいて、一番大切だった人。
その人が、突然いなくなったら・・
世界は変わるのだろうか?

一つだけ言える。
一番大切な人なんて、いなくなってから大切な事に気づくのだ。
後悔がとめどなく押し寄せてきても・・
それでもどうしようもなく、日々は過ぎていく・・。

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岸田智也。24歳。
小さな映像会社に入社して間もない。
ベランダに出て、奇妙な水平の虹を見つける。
思わずその虹を携帯で撮る。
そして、何となく大学時代からの友人、佐藤あおいに電話をしたのだった。。

「元気?こっちは・・まあ、あいかわらずです。」

慣れない仕事、多分向いてない仕事・・
毎日のように怒鳴られ続ける智也。
そんな時だった・・

アメリカでの飛行機事故により、あおいが命を落としたという訃報が入ってきたのは・・。

かつてのあおいの上司でもある樋口と共に、智也はあおいの家へと向かった。
そこには、大学時代に映画研究部で青春を共にした仲間たちが集まっていた。

(両親も、友人たちも、智也ですら・・
未だその事故は夢のように思っていたのだろうか?
人が死んだという状況とは思えない程、再会を喜びあっているようにも見えた。)

両親とあおいの妹のかなは、遺体を引き取るために渡米する・・

そして、現実と回想が交差する・・

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智也とあおいの出会いは、とても最悪だった。
当時あおいがバイトしていた先のサユミという女性に、智也はストーカーまがいの行為をしていた。
その為、あおいをいかにしてそのバイトから辞めさせるか?という事に力をいれ、そうすれば自分が代わりにバイトとして入る事が出来る。そしてサユミと仲良くなれるかも・・
と智也は考えていた。

お礼として、指輪のようにした一万円札をもらってしまったあおいは、仕方なくサユミと智也のデートをセッティングすることを決めた。
しかし・・

サユミには断られ、自分が所属する映研のフィルム代として一万円につられた事を告白し、そのお金を返そうとする。
しかし、意外にも智也は「これでいい映画撮ってよ」と言うのだった。
そんな二人の空の上には、水平の虹がかかっていた・・・

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何だか分からないうちに、あおいが監督を務める

THE END OF THE WORLD

の主演を務めることになった智也。
しかし、初めてということもあり演技は下手だわ、台詞は覚えられないわであおいの怒りを買ってばかり。

それでもあおいは根気良く智也の台詞の練習に付き合った。
その結果、なかなかいい感じになってきた所に智也の恋だ。

もう一人の主演、今日子に恋をしたという。
秋田生まれの秋田美人。
智也は自分の恋を応援して欲しいとあおいに言う。
ラブレターの代筆まであおいに頼んで・・。

代筆してもらったラブレターなんて!嬉しくないでしょ?!
と言って一度は断ったあおいも、ラブレターを書きかけて眠ってしまった智也を見て、協力してやるかという気持ちになった・・

それからは、友達でもなく恋人でもなく、もっと特別な関係を共有しあう二人。
他愛もない話をしたり、かなと3人でお祭りに行ったり・・・

そして、映画は完成し・・だけど智也の恋は片思いで終わって・・

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大学卒業後。
小さな製作会社に入社したあおいは、ドキュメンタリーを撮っていた。
上司の薦めで渡米を決意したと同時に、自分の欠員を埋める為に紹介した智也のこと。
智也は、バイトばかりで生活していたのだ。
早速入社したのだが・・

そこに待っていたのは、叱咤をうける毎日。
嫌になって退職を上司に相談した智也だったが、意外にもあおいがどうして自分を推薦して会社に入れてくれたのかを知ることになる。

「ロスに行くの」
「ロス?日本にいればいいじゃん」
「日本なんだ・・。傍じゃないんだ」

それから、仕事でデートカフェに行った帰り。
冗談であおいにプロポーズした智也は、あおいに激しく怒られ、泣かせてしまう。
訳も分からぬまま、あおいはロスへと旅立っていった。

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デートカフェで出会った千鶴と、ひょんなことから交際・同棲を始めることになった智也。
しかし、彼女の嘘を知り智也は別れを告げた。

その時ベランダに出ると、あのときと同じ水平の虹が空にかかっていた。

そして、メールをする。
あおいへ。

今は亡き、あおいの生前の姿。

今日子から代打でヒロインを演じることになったあおいと、智也の映画。
仲間達と映画を上映したのだった・・

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あおいの家に、再び訪ねた時だった。
妹のかなが家に招きいれてくれた。
そして、あおいの部屋へ。

そこには、盲目のかなには分からない何か紙のようなものがあった。
かなは「何?これ?」とたずねながら、智也はその手紙に書かれている言葉を読み始める。

それは、あのとき今日子に宛てて書いた(代筆を頼んだ)ラブレターだった。

そのラブレターを読み終え、何気なく手紙の後ろに書いてあった文字に目をやった。。

そして・・・。

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ラストで、泣きました。
もう両目から、ぽろって涙がこぼれるのを抑えられなかったです。

こんな形で、あおいの存在の大きさに気づいてしまった智也は、本当にバカだよ。
悲しすぎて、笑えるもの。

やっぱり、蒼井優の抑えた演技がいいわ(いつもこればっかりね!)。
脇役なんだけど、死んでしまったあおいと生きている智也を繋ぐ、架け橋になっているんだもんね。


私なんかは、もう一年にたった一度のメールだけの関係で。
どちらかが死んだとしても、例え偶然にもその情報がどちらかの耳に入ったとしても、そんなのはもうこの状態では今までと何も変わらないと思うんですよ。
生きてたって、死んでたって、昔のように一緒にはいられないんだから。
悲しいけれど、相手の「死」すら・・
受け入れられないんじゃないかな。

あまりにも現実味が無すぎて。

でも、この二人のようにいつも気がつけば傍にいたような二人だからね・・。

「死」に気づいた瞬間からあまりにも痛いし、気づいて受け入れなければ多分涙も出てこないのでしょう。
親や妹、部の仲間、元上司、智也まで・・
話だけでは信じられない、とでも言うように笑顔を見せていた。

でも、実際に帰国して遺骨を持って帰ってきた途端、同級生の表情は曇った。

智也に至っては、あの手紙を読んだらこみあげてきてしまったんだもんね・・。
受け入れる前から、死にあまりにも実感がなかったんでしょう。

それがあまりにもリアルで、もどかしくて、とにかく悲しかった。


監督:熊澤尚人
原案:桜井亜美
プロデュース:岩井俊二
出演:市原隼人/上野樹里/蒼井優/酒井若菜/相田翔子/鈴木亜美
2006年 

岩井さんの携わる作品が好きだ。
少年少女たちも、スクリーンに映る空や景色も。
岩井さんの手にかかると、本当に鮮やかに映し出されるから素敵。

元々、鈴木亜美がすっごく演技の勉強をして挑んだ映画、とかって朝の芸能ニュースで見たんだったけな?
確かに、凄く少ない出演シーンだったけど、意気込みは伝わってきたかも。

花とアリス」に引き続き、相田翔子が同棲する相手役で出てきたのだけど、主人公の鈍感さに苦笑いです。
それと「リリィ・シュシュのすべて」の時から出演している、蒼井優さんと郭智博さん。
そしてリリィで主演デビューを果たした市原隼人君は、岩井さんの映画に出演したかったんですって!

それと、あまり好きではなかった上野樹里さん。
「ジョゼ」とか「スウィングガールズ」と「のだめ」とか。結構あくの濃いキャラを演じているイメージがあったので苦手だったんだけど(作品的には好き)。

案外、こういう「等身大」?っていう役ははまってたと思います。
あの智也にキレるシーンとか、痛い程伝わって来ました。

久々に、素敵な作品に出会えました。