No-music.No-life

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陽の子雨の子

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思いがけない夏が、いま始まる。

私立の男子中学に通う夕陽、24にしては幼く見える雪枝、15で雪枝に拾われて4年になる聡。

「アンタなんか捨てちゃおうと思うのよ」

それなりに幸せに生きてきて、家庭にも学校にも特に不満などなく過ごしてきた夕陽・14歳。
幼い頃、家族の愛に満たされずに生きてきた雪枝。今は祖母の残してくれた家に住んでいる。
その雪枝に偶然拾われた聡。雪枝に拾われた15歳の時から、外界との接触がほとんどない生活を送っている。

3人が出会い、夏がくる-

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豊島ミホさんの最新作です。

どれだけ楽しみにしていたことか!

時々、ネットで本の検索をしてチェックしているのですが・・
豊島さんが新作を出すのを知って、今か今かと待っていたのです。

今月の末にもまた出るらしく、とても楽しみでございます。

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さて、今作。

読み終えて感じた印象は、'あ、新境地

今までの豊島作品とは、似ても似つかない作品だという事は間違いないと思います。
いや、根っこは繋がっているのだとしても・・

何だろうなあ。

ほとんど、豊島さんの作品って男の子が主人公ってないからなのか?

まして「男の子」が主人公だから余計なのかな。

中学生の夕陽と、19歳の聡の語りが交互になっていて二人の場面が重なっているシーンでは、それぞれの心情をつかめるので面白かったです。

何となくなんですけどね、
児童書っぽい読みやすさ、物語だった気がするんです。

森絵都さんと笹生陽子さんをたして2で割ったような感じ?(笑

夕陽の語りでは、笹生さんを。
聡の語りでは、森さんをちょっと想像してしまいました。

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それにしても、聡と夕陽をつなぐ雪枝が・・
24にもなって、何してるんでしょう。
子供からかって何が自分の得になるんでしょうか。

「普通」でありたくないが故に・・よくもまあ。

でも、自分も過去家族で色々あったので少し分かる気もしたんです。
子供の頃の『家族』って大きな存在じゃないですか。

雪枝の「酷い目」のようには、なっていなくても・・自分も人の家とは違うからなあ。


「普通の家に育てなくて、みんなから見放されて、そういうの、なんかのタネにしなくてどうすんの。これを使ってあたしはのし上がれるんだって思わなきゃやってられないでしょ」


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作中に出てくる雪枝の作った短歌が結構素敵。
五・七・五のリズムがいいですよね。

白い裾 レフ板にしてひまわりと 君をフィルムに焼きぬ八月

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自暴自棄になっている雪枝が、聡の存在の大きさに気付くのがやっぱり夕陽との出会いもなければなかったのだと思うと、とても嬉しくなる。

ひと夏の思い出は、多分3人にとっても一生忘れないのでしょう。
勿論、私の心にも深く焼きついて残っていきます。

お薦めです☆