『藍染の色に思い出浮かべて
夕凪の橋で君を思い出せば
忘られぬ想い この胸焦がして
夕暮れの色に 切なきこころ』
/夕凪の橋
不覚にも涙がこぼれてしまった。
音速ラインのメロディーにはどこか切なさや哀愁が漂っている。そしてそこに歌詞をのせると、瞬く間にせつな系音速ラインのサウンドが完成する。
タワーレコード限定CD、ファーストミニアルバムの「うたかた」では、ファーストとは思えぬ完成度であったし、視聴して購入に至るまでには時間などかからなかった事は言うまでもない。
私的な事で恐縮だが、タワーレコードには「男泣きギターロック」というコーナーが存在する。
そのコーナーには私が好みとする数々のバンド・・・例えばランクヘッド、Syrup16g、レミオロメン、つばき、フジファブリックなど・・・が陳列されているのだが、音速ラインを知ったのもそのコーナーで推していたという事と、たまたま購入したQuipマガジンに付いていたサンプラーCDの中に収録されていた「冬の空」という曲を歌っていたバンドがまさに音速ラインだったという事などが挙げられる。
音速ラインは、ギター・ベース・ドラムからなる3ピースバンドだ。
少し高めの親しみあるボーカル、完成度の高いサウンド。
3ピースで活動をしているバンドは世の中には沢山存在する。
しかし最もシンプルな形のバンド形態で、ここまで涙腺を刺激する音を創り出せるバンドが他にいただろうか?
『なんとなく微笑んで 君が少し近づいたら
くだらない明日を越えて 生きていける そんな気がして』
/声
音速ラインの歌詞には、『君』というフレーズが多用されている。
そして主人公『僕』は、ほとんどの場合『君』への想いが叶わず、『君』との思い出や『君』への想いを
吐き続ける。
それは痛い程真っ直ぐで、胸が締め付けられる程に切なく、そしてそれはいつしか自分自身の恋愛へと繋がっていってしまう。
そう、不思議な事に驚く程女性側の視点で見ても共感してしまう歌詞なのだ。
そしてこのサウンドの心地良さ。
決してハッピーエンドではない。
忘れられない想いを、叶わない願いを、ただ歌い続ける。
なのに、どこか爽快で、前向きになれる気がしてくるのだ。
男泣きギターロックと銘打てると思われる他バンドでは、ゴーイングアンダーグラウンドも上手い。
切ない想いを実に爽やかに、軽快に時にポップに音にしてしまう。
しかし音速ラインの音の創りもまた、ゴーイングアンダーグラウンドとはまた違った未来への可能性を多大に秘めている気がしてならないのだ。
最新作「スワロー」もまた、例に漏れず『君』との別れの歌である。
『離れてしまった手と手が
今でも君を呼ぶけど
さよなら 言わなきゃいけないや
君との永遠の日々』
/スワロー
一見バンドサウンドだけを聴いていると、これが別れの歌なのか?と疑問を抱くようなアップテンポなサウンド。
しかし歌詞が上手く音に重なって、そしてようやく別れの歌だと気付く。
この歌を聴きながら、真っ青な空を見上げて思いっきり泣ける気がする。
音速ラインの音楽は、決して想いは叶わないけれど・・・だけど、いつかその現実を受け入れて前へ進めるんじゃないか?という希望が見えてくるような気がしてくる。
今日もまた、音速ラインにいい意味で泣かされる。
これこそまさに「男泣き」というやつなんだろうか?
メソメソしない、くよくよしない。
悲しい時はとことん悲しんで。
そしたら浮上すればいい。
ゆっくり、一歩ずつ。
音速ラインは、そんな希望を与えてくれるバンドだと私は思う。
近いうちにまた新曲が届けられるそうなので、そちらも大いに期待したい。