No-music.No-life

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プリズムの夏

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「わたしはわたしをやめたい。もう消えてしまいたい。」

ネットで見つけた、うつ病女性の日記。
高校3年生のぼく(植野)は、書いているのが片思いの相手、松下さんではないかと疑い始める。
いつも行っている映画館で働く美しい彼女に、そんな気配はない。だけど、積み重なる数々の証拠。

日記の女性が松下さんなら、ぼくは助けたい。どんなに苦しいことがあっても-


関口尚さんの本です。
寂しさを紛らわそうと本屋で文庫を眺めていて、ふと目についたタイトル。
内容も、惹かれるものがありました。
だけど、正直なところあまり期待はしてませんでした。

それがですよ、これ・・・よかったです。
出会えて良かった。

物語は、高校3年生の主人公、植野とその友達の今井、二人がよく通っている映画館で働く女性松下さんとの話であります。

進路がぼんやりとしか決まっていない植野。
琴を弾くことを生きがいとしているが、リストラされ、うつ病になっている父親がいて、大学への進学も厳しくなって・・家庭環境が複雑な今井。
モデルのような美貌を持ちながら、無愛想で22歳という年齢とは不相応な外見の映画館の受付嬢、松下さん。

二人が松下さんに出会い、何とか気を引こうと頑張るのだが空回り。
そして松下さんに恋人がいることを知り、意気消沈する二人。
そんな時に知った・・ネット上で公開されているうつ病の女性の日記。

ひょんな事から、その日記の作者「アンアン」が松下さんではないかと疑いはじめ・・・


何と言っても、主人公植野と今井のひたむきさ、若いが故の葛藤、悩みが巧みに表現されている所が魅力でしょう。
誰もが一度は経験した事があるような、苦い恋、つきつけられる現実。もどかしさ・・そんなものが一気に押し寄せてきて、物語にいつの間にか惹きこまれていました。

特に印象的だったのが、今井の言葉です。

「自分がいちばん弱い人間だと初手から決め付けているからうつ病になんかなるんだ。うつ病への偏見と思われるかもしれないけれどおれはそう思っている。
自分がいちばんかわいいと思っている人がうつ病なのさ。原因は自分にあるとは思っていないぜ」

父親がうつ病になり、厳しい家庭環境にいる今井の言葉がとても突き刺さりました。

私自身、うつではないけど・・・
気分の浮き沈みが激しいことを、よくブログでも書きますよね。
でも、そうやって自分は弱い。助けてって誰かに慰めて欲しいんだろうか?甘えているんじゃないだろうか?って思えてきて、複雑になりました。

でも、その気分の浮き沈みの激しさが・・逆にこの物語に出てくる「アンアン」の日記の内容を見て、痛くて・・でも、何となく分かるような気にさせてくれたのでしょうか。

ぜひ一度、読んでみてください。