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風が強く吹いている

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寛政大学4年生のハイジはある日、貧乏な新入生カケルを陸上部の寮・竹青荘に連れてきた。カケルはかつて天才ランナーと呼ばれたが、今は陸上部に所属していない。竹青荘の寮長も務めるハイジはカケルに対し、陸上部入部などを条件に家賃格安の竹青荘への入寮を許可。そしてここからハイジの野望が始動する。それは寛政大学陸上部で箱根駅伝に出場すること。ハイジは長距離専門の竹青荘メンバーらを徐々にその気にさせていき……。


原作:三浦しをん
監督:大森寿美男




三浦しをんさんの原作で感動して、これがいつか映像化したらいいなあと思っていたのでした。
そして映画化が決まった時、嬉しいのと同時に「大丈夫かな・・・」という不安がもたげてきました。

何しろ「イケメン達」が箱根駅伝に挑む・・・というような、安易な宣伝文句で謳われていた事、更にそういう宣伝文句で作られた、森絵都さんのDIVE!!の映画は、期待していただけにがっかりさせられて、大好きな佐藤多佳子さんの一瞬の風になれのドラマ化はもうさんさんたる結果・・・。

唯一原作と同等(それ以上?)に面白かったのは、あさのあつこさんのバッテリーだけで、その主演俳優の林君があのカケル役を演じるということで、期待は膨らんでいました。

けれどその林君が演じたDIVEも、俳優達の演技が悪くなかっただけに、監督の技量や脚本家のせいでしょうか・・・期待を裏切られていました。
なので、この作品もあまり期待しない程度に楽しみにしていたのです。

公開されてから、映画のレビューを見ると・・・お!なかなか高評価ではないですか!

そんな訳で、友達と有楽町まで観に行ってきました。
都内だと金券ショップで前売り券とか売ってるからいいですね。

最近はずっと郊外のシネコンに行ってましたけど(オークションで安くチケットを買って)、今回は会社の福利厚生でピックアップされていた本作の前売り券を既に購入済みだった私でした。


それにしても、この映画館・・・でかい!
二階席の一番前で観たのですが、全然人が埋まってない(笑)
3分の1も埋まってなかったのではないでしょうか??

それでも逆に人があまりいなくて見やすかったというのはありますが、日本語字幕が出るという事で、外国映画を見ているみたいに、ついつい字幕に目を追ってしまうのが大変でした・・・。




結論から言うと、とても良い映画でした。

まず、何が良いって効果的に使われている音楽でしょうか。
俳優の演技、映像の撮り方、そういうのもまずまずだったのですが、BGMって意外と大事だと思いませんか?

まるで何か凶悪な事件が起きる前触れか?というような緊迫した音楽が、箱根駅伝という大会を目前に控えた選手たちの緊張・不安・焦りを掻き立てます。

私の中で、ハイジのイメージが小出恵介とは違っていて、やっぱりそのイメージは映画を見ても違和感を覚えずにはいられなかったのですが、だからと言って、小出恵介の演技がダメだったという訳ではないのです。

原作のハイジとはちょっと違うなと私は思いましたが、この映画の中でハイジの存在はとても大きいのです。
その独特の存在感を、小出恵介は自分なりのハイジとして演じていたと思います。

そして、エースのカケルを演じた林君。

かなり走りこんだのだろうな、というくらい・・・十分に体を鍛え上げたのだろうことが分かりました。
天賦の才能を持った、走るために生まれてきたのかと思えるくらいに早く走る事が出来るカケル。
そのカケルを演じる林君は、私の中では原作のイメージぴったりでした。

林君が出演する映画は結構見て来ましたが、バッテリーの時に比べると、本当に演技が上達しましたね。これからも楽しみな俳優さんです。

イケメンイケメンって言われるけど、そういう面だけじゃなく、演技力の面でもぜひとも注目して欲しいです。

そして、何となく安易な配役だな、と思っていたジョージ・ジョータを演じる斉藤兄弟、黒人留学生のムサを演じる、ソフトバンクのお兄さんこと、ダンテ・カーヴァー

いやいや、そんな事なかったです。

箱根駅伝本番で、一人一人のシーンが短い人とちゃんとある人とがあったのが不満ですが、原作のイメージを見事に体現してくれた!という感じでした。

特に良かったのが、神童が実家の母親と電話をするシーン。
泣きました・・・。

「いつもこうなんだ・・・肝心な時に、期待を裏切る」

日本語を完全に理解していないムサに、一つ一つ丁寧に言葉の意味を教えてあげる優しい神童。
田舎の小さな集落で、頭が良いとか、スポーツが出来るとか、人より秀でている子供であったというだけで、神童と呼ばれていたのが名前の由来。
都会に出てきてから、それが田舎の小さな世界だけの事である事をきちんと分別していて、その控え目な所がとても良いんですよね。

そんな神童が、駅伝当日に体調を崩し、順位を大きく落としてしまうことで落胆するのですが、ハイジが実家に電話をかけて、母親と神童が話をするシーン。
声だけの出演(?)の和久井映見(ですよね??)が、ほんっとに良い味を出してます。
泣きましたよ、本当にこのシーンは。


ユキを演じる森廉君(怪奇倶楽部の頃が懐かしい!)のメガネ姿はヤバいですし、原作のイメージ通り!

キング、二コちゃん、王子・・・どれを取っても素晴らしかったです。


素人集団が箱根駅伝を目指して、実際に出場できる事になって――

現実的に見たら、ほぼあり得ないような事です。
原作を読んでいても「ありえない!」と思わず叫びそうになってしまったくらいでした。

なのに、その設定に無理がないのですよ。

一人一人の素質を見抜き、着実に体調管理やトレーニングを密かに管理しているハイジのしたたかさもさることながら、完全に「素人」集団ではないという所が、ポイントでしょうか。


原作では、葉菜子と双子達の恋愛模様などが描かれてましたが、映画では葉菜子はハイジが好きみたいな描き方でしたね。
時間的に削るしかなかったのでしょうが、それでも2時間強に収めてこれだけの作品に仕上げることが出来た事に、喝采を送りたいです。


ただ、字幕が出ているから登場人物達の名前を区別しやすかったけど、字幕がなかったら特に名前の紹介などがないような人は分かりづらかったかもしれませんね。


鈴木京香さん、和久井映見さん、寺脇さん、高橋ひとみさんなどなど、脇役に豪華俳優陣が起用されているのも(しかもワンシーンくらいしかないのだけど)注目。


しかし一つだけ残念なシーンが。

この映画のエキストラ募集とかで応募していたので事情は分かるのですが・・・
最後のハイジの走るシーンで、エキストラの応援者達(特に若い子)が、物凄く笑顔だったのがどうかと思いました・・・

あの状態の選手がいたら、あんな風に笑って応援なんて出来なくないですか・・?

いかにも有名人や好きな俳優が見れてテンションあがっちゃってます!みたいな笑顔になっている応援者・・・
シリアスなシーンで、俳優達が皆険しい表情をしている中で、それだけが異様に感じてしまいました。。。
それだけが、本当にとても残念!

とは言え、原作ファンの私から見ても、満足な映画でした。

お薦めです。