無謀な戦い。
全く敵わないものならば、最初から戦いになんて挑まない。
だけど下手すればその戦いに勝つ時だってあるのだ。
だけど下手すればその戦いに勝つ時だってあるのだ。
1度だけ、ほんの1回きり。
戦いに勝ったとき、私は30分早い帰宅を許された。
17:45。
会社の終業時間である。
45分になったと同時にオフィスを出て、すぐさまエレベーターに乗り込む。
1階に辿り着くまでに各階に一度もとまらなかったら、勝算もあるかもしれないという予感が満ちてくる。
1階に辿り着くまでに各階に一度もとまらなかったら、勝算もあるかもしれないという予感が満ちてくる。
会社から駅までは5分とかからない。
私は駅まで走る。
エレベーターを駆け上がる。
人にぶつかりながら、改札を潜り抜け、階段を下りていく。
私は駅まで走る。
エレベーターを駆け上がる。
人にぶつかりながら、改札を潜り抜け、階段を下りていく。
電車が来ている。
発車のベルが鳴っている。
私はまだ階段の半ばである。
発車のベルが鳴っている。
私はまだ階段の半ばである。
私の前に早足で階段を下りている女性の姿があった。
おりしも、ちょうどやってきた下り方面の電車から降り立つ人でごった返している。
人をかきわけたいが、階段を上ってくる人にほぼ支配された階段は、人一人分のスペースしかない。
人をかきわけたいが、階段を上ってくる人にほぼ支配された階段は、人一人分のスペースしかない。
もどかしい思いで階段を駆け下りる。
前にいた女性はするりと、ドアの閉まる寸前で電車に乗り込んだ。
地上に着いた私の横を、ぴったりとドアを閉じた電車がゆっくりと走り出していく――
昨日に引き続き、その電車を前にして私は泣く泣くその姿を見送ることしか出来なかった。
17:50発のその電車に乗れれば、地元の電車の、1本早いもので帰ることが出来る。
田舎の1本と都会の1本ではわけが違う。
それに乗れるか乗れないかで、帰宅時間に30分の差が出てしまうのだ。
片道2時間弱の道のりを通っているわけだが、すんなり帰ることが出来れば、18時前に会社を出ても1時間半で帰宅できるはずなのである。
しかし電車の本数が少ないということは、スムーズに帰ることが出来ないということを意味している。
結局今日も間に合わず、乗り換えのホームで無駄に30分近く待たされる羽目になるのである。
ちなみに50分発の電車の次は、52分発なのだが、この電車では間に合わない。
乗り換えの電車の時間は、55分発なのである。
丁度駅に到着すると同時に、走り去っていく電車の姿を見るのはなんとも悲しいものがある。
5分もない時間で、どうやったら駅まで辿りつくことが出来るのか。
駅までは辿りつけている。
あとは階段をいかにして駆け下りていくか。
あとは階段をいかにして駆け下りていくか。
あの人ごみがいけない。
人の波をかきわけている時間が惜しい。
人の波をかきわけている時間が惜しい。
あと一歩、数十秒早ければ乗れるはずなのだ。
私は無謀にも、その戦いに挑み続ける。
全ては30分早い帰宅のために――