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ぼくたちは大人になる

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医者をめざし、ひたむきな日々を送る高校生。その前途に、思いもよらぬ試練が立ちはだかった。人はしくじるべきときにしくじれるかどうか。18歳の「過ち」と「新たな出発」を真摯な眼差しで描いた成長小説。




佐川光晴さんの本です。

この本は、本屋さんで何か気になる本はないかなあと物色していたときにふと目に留まってメモをしておいたものでした。

なので、佐川さんという作家も知りませんでしたし、初めて読んだわけです。

が、

予想以上に良かったです。

最早現役を退いて数年以上が経ちますが、ああこれぞまさしく青春なのよと思う、10代ならではの将来への不安や葛藤。学校生活という小さい枠の中で、これでもかこれでもかとどうでも良いことで悩んだり悲観したり。

自分は大学受験をしていないせいもあって、分からない部分もあったのですが、大人という年齢になってしまった自分が今こうしてこの本を読んでみると、何故かやけに胸にじんと響くものがあって・・・

大人になるって、こういうことなんだろうか・・・と切なくなったりもしました。

10代の頃みたいに、「大人」になるのはまだまだ先だと思っていたり。
将来を考えて不安にはなるけれど、まだそれが現実を伴っていないから・・・今みたいにあと5年で30歳になるんだ、っていう遠くはない未来が目前に迫っている自分は、具体的な不安と共に生きている。

あの頃みたいにはもう考えられないし、もう「子供」ではないんだなと妙なところで気付かされました。


佐川さんの、この文章の優しい感じがとても好感を覚えます。


勉強もスポーツも万能で、挫折を知らずに生きてきた主人公。
両親の離婚と共に複雑な家族関係を強いられるようになってしまった事で、妙に悟ったようなところもある。
家を出たいがために、国立の医学部を目指す主人公の周囲で起こる様々な事件。


家族との関係、友人との関係、先生との関係、恋人との関係―

10代って、こんなにももどかしくて眩しかったんだっけ・・・とそんな事を思いながら爽やかに読めました。

でも一つ納得がいかないのが、前半に華々しく登場した土屋さんが後半にほぼ登場しなくなってしまうこと。

演劇を志し、優等生なのに影で煙草を吸っていて、妙に大人びた女の子っていう設定はとても印象に残っただけに、後半でほとんど登場しなくなってしまうのは残念でした。

話の流れ的には読みやすくて飽きなかったのですが、ラストの終わり方もまだ続きがありそうな感じで少し気になりました。

けれど、好きな部類に入ります。

初めて読む作家さんの本が、「読んで良かった!」と思えるのって素敵です。