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猫鳴り

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宿した命を喪った夫婦。思春期の闇にとらわれた少年。愛猫の最期を見守る老人。それぞれのままならぬ人生の途に「奇跡」は訪れた。濃密な文体で、人間の心の襞に分け入ってゆく傑作長編。一匹の猫の圧倒的な存在が物語を貫く。




沼田まほかるさんの、第三作目の本です。

二作目で危うく嫌いになりそうだったのですが、いやいやいや!
今作の雰囲気が凄く良かったです。

自分は動物を飼った事がないのですが、動物を飼ったことのある人、または猫好きの人は読んでいてとても辛いかもしれません。

第一部は、捨てられていた仔猫を飼うことになった中年夫婦。
もともとの飼い主だったという少女との交流。

第二部は、飼い主だった少女の同級生の不登校の男の子と父親と、猫の話。

第三部は、第一部の夫婦の20年後の、旦那さんとすっかりおじいさん猫になった一人と一匹の話。


ああ、この雰囲気・・・大好きです。
終わりの匂いがぷんぷんするこの感じ。

元々かなり文章力のある沼田さんですから、読み応えもあるし、安心して読むことが出来ました。

と人間の交流という話だけでなく、人間世界の面倒くさいしがらみと話がうまく混じり合って、何とも言えない余韻を醸し出しております。

特に、第三部の死が迫る猫とおじいさんの話は思わずなきそうになりました。


1作、2作、3作と一癖も二癖もある作品をさらりと書いてしまう沼田さんが凄い。
どの作品も全く違った物語として読めて、その多才ぶりに関心してしまいました。

他の作品も読んでみたいと思います。