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日傘のお兄さん<文庫版>

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それは突然だった。保育園の頃、毎日遊んでくれた大好きだったお兄さんが、中学生になった夏実の前に現われた。
「追われているんだ、かくまってくれないか」なんと、お兄さんはロリコン男としてネット上でマークされていて・・・!
こうして、夏実とお兄さんのちょっとキケンな逃避行が始まった-

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豊島ミホさんの本です。

はい、単行本持ってますよ。それが何か?

だって、だってさあ!
表題作からそのほか2編にいたるまで、改稿されて、タイトルも変わっての豊島さんが書き直した作品ですよ。

これは買わない手はありますか!

買いますよ、ファンですもん。

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文庫版には、5編収録されていたのですが、そのうちの1編(主人公が40歳のおじさん、っていう話)がなく、あわになるはそのまま、その他バイバイラジオスターすこやかなのぞみがタイトルも変わって全面的にプロットを組みなおして、登場人物の名前はそのままに書き直したそうです。
日傘のお兄さん自体も、骨組みは一緒なのですが、細部にちょこちょこと直しが入っているので、また違ったものとして読むことができます。

あわになる
日傘のお兄さん
すこやかだから
ハローラジオスター


何ていうか、当時の豊島さんの文体というのはなんとも軽いというか、ああ、R-18文学賞受賞者なんだな、って思う感じの作風だったんですよね。

多分、檸檬のころから豊島さんを知った人には、違和感があるのかもしれません。

今作は、豊島さんのエッセイやブログを読んでいる人には、まんまやん!って思うような軽いタッチで描かれていながらも、『今』の豊島さんの言葉で物語が紡がれていきます。

単行本収録時に、「すこやかなのぞみ」と「バイバイラジオスター」のカップルの感じが凄く良かったのだけれど、今回はもっと主人公達のタッチが軽い。

けれども、何ていうか・・良いんですよね。

骨組みは変わっても、私は豊島さんのこういう所が好きなんだと思うのです。

最近私が細々と書いているシリーズもののチンケな小説でも、ああ私は豊島さんと同じものを目指しているのかも分からんなあ、などと思うのです。

だって、豊島さんのこういう物語が、私の目指すものとちょっと、いや大分似ているんですもの。

ああ、いいね。豊島さん。

この文庫を読んで、単行本が未読の人は、ぜひともそちらも読んでみて下さい。