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つきのふね

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あの日、あんなことをしなければ・・・。心ならずも親友を裏切ってしまった中学生、さくら。
進路や、万引きグループとの確執に悩む孤独な日々で、唯一の心の拠り所だった智さんも、静かに精神を病んでいき-

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森絵都さんの本です。

この本には、図書館で出会いました。
単行本として発刊されていたこの作品を、手元に欲しいと思うほど大好きな本です。

単行本を買おうか迷って、この前文庫本を探していたら、目に留まったのがこの「つきのふね」でした。
文庫化したんですね!

嬉しくって、すぐにレジへ向かいました。

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主人公さくらは、万引きをして捕まったところを店員の智さんに逃がしてもらった。それがきっかけで、智さんと仲良くなる。

智さんは、ある「任務」で人類を救うという「船」の設計を仕事としている。
それは、音も無く自然に、突然に始まる仕事だ。

さくらはそんな智さんの横顔を眺めている。

万引き事件がきっかけで、親友の梨利と気まずくなり、グループからも孤立する日々を送るさくら。
親友の梨利を好きな勝田君が、さくらに構うようになり、智さんをも巻き込み何とかいい方向に持っていこうと努力するのだが、いつも空回りしてばかりだ。

そんな中、放火事件が近所を騒がしていき・・・梨利が売春の斡旋をしたという話が飛び込み・・

精神を病んでいく智さんを何とか元に戻そうと必死になるさくらと勝田君。

勝田君がでたらめで作った古文書。

「・・・真の友 四人が集いし その時 月の船 舞い降り 人類を救う・・・」

この古文書が、思わぬ形でさくら・勝田君・智さん・梨利の四人の歯車を噛み合わせて・・・

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ドキドキしながら読んでしまうのは、2度目でも同じでした。
展開を分かっているのに、続きが気になってどんどんめくっている。

中学生にして(!)人間をやっているのにも人付き合いにも疲れた主人公さくらの抱える過去。
それが親友梨利とのぎくしゃくした関係のきっかけになっているわけです。

中学の時って、こんなだったっけ?
って思ってみると、ああ・・でも・・納得できるなと思ってしまった。

人間関係の壁にぶちあたり、グループ内での派閥なんかに巻き込まれ、毎日が苦痛だった。
さくらのように、心の拠り所の智さんみたいな存在はいなかったけれど、その存在も心を病んでいっていたら・・

一体、どうなっていたのでしょう。

「月の船」は存在しない。
だけど・・・軌跡は起こる。
祈りは、必ず通じる。

人生、悪いことばかりじゃない。

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「だれだって自分の中になんか怖いもんがあって、それでもなんとかやってるんじゃないのかよ」

と梨利のことを批判した勝田君の言葉が心に残りました。

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この本に、出合えてよかった。

森絵都さんのファンですが、上位に入るほどに大好きな作品です。

お薦めです。