No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

日傘のお兄さん

イメージ 1

今でも鮮やかに蘇る、あの竹やぶの家。幼い私は、縁側で待っているお兄さんと遊ぶときが一番幸福だった。今、そのお兄さんが目の前に立っている。犯罪者として…。

豊島ミホさん制覇への道、第三弾。

ゆうきさんのブログ(トラックバック先参照)でお薦めしていたので、期待していた本です。

物語は

バイバイラジオスター
すこやかなのぞみ
あわになる
日傘のお兄さん
猫のように

の5編です。


特にお薦めなのは、

『バイバイラジオスター』

ラジオから流れてきたのは、昔の恋人の声だった。

無口だった恋人が、ラジオ番組のパーソナリティーを務めている。
信じられない突然の出来事に驚きながら、溢れだしてくる昔の記憶。

試行錯誤を繰り広げながら書いたリクエストはがきを、ポストに入れることが出来なかったり
就職活動がなかなか上手くいかなかったり。

恋人が就職活動中に別れてしまったこと。
今となっては、その時の恋人の気持ちが分かってきたり・・

最後に、主人公が出したリクエストハガキが読まれるのですが・・
ちょっぴり切なくて、でも微笑ましい。
そんな結末。

心にすうっと染み込むような、温かい短編です。


『すこやかなのぞみ』

大人になるにつれて、恋愛をしていく上で必ず通る道がある。

主人公涼子は、小学6年にして出会った今の彼氏とは21歳になった今でも体の関係が一切ない。

彼の誕生日の日。
自分からきっかけを作ろうとする涼子。

そして、彼ナツは言う。

「ごめん、俺ダメなの」

そして彼の秘密を知る事になる。

病気の後遺症が残るナツとナツに触れて欲しいと願う涼子。

そういう関係がなくたって、こんなに想い合える関係になれたらいいですよね。

と、結構すらすらと読めて何だか爽やかな読後感がありました。


『日傘のお兄さん』

冒頭の本の紹介文はこの物語のものなんですが。

これは中篇。

幼いころにいつも一緒に遊んでいた「お兄さん」と、8年半ぶりに再開した夏実。

久々の再会だったが、幼い記憶そのままに優しいお兄さん。
でも実はネットで騒がれている「日傘男」だと知る。
そして「追われる身」であることも・・・

そして一緒に逃亡することになった夏実。

お兄さんの目的は何なのか?
どうしてネットで騒がれるようになったのか、お兄さんが自分を「犯罪者」というけれどそれは本当なのか?

分からないことだらけなのに、夏実はお兄さんを犯罪者とは思えない。
むしろ、この逃亡劇を楽しいとさえ思う・・・

逃亡中、お兄さんの過去や目的が一つずつ明確になっていって・・。


最後はちょっと、強引な結末じゃないかと思ってしまったのですが。
だってちょっと・・有り得ないんじゃないか?

それは読んでみてのお楽しみですが。

でも、続きが気になってしまう感じでした。

仕事のお昼休みにちょこちょこ読んでいたので、気になってしまって仕方なかったです。

この短編集はなかなか良かったです。

ちょっぴり切なくて、だけど後味はいい。

素敵な余韻が残る、そんな作品だと思います。